僕は写真を撮っている
僕は写真を撮っている。
写真を撮っている人のイメージってどういうものなのだろう?
・ニヒルな感じがする(低い甘い声で「君、美しいよ。」とささやいてくれる)。
・頭が爆発している(日本で有名な写真家って、どういう訳か、頭に特徴がある)。
・やたらと人差し指の動きが速い(きっと色んな事に役立つだろう。どう役立つかは、「人差し指 動き 速い」で検索してほしい)。
・鋭い眼光で被写体を探している(そうやって町を歩いていると、不良に絡まれる)。
・右目が大きい(ファインダーを覗いていない方の目は瞑っていることが多く、そちらの目が退化し、小さくなる)。
こうやって写真を撮っている人のイメージを列挙すると、僕はどうやら写真を撮っている人とは思えなくなってきた。
では、僕は一体何を撮っているのだろう?
きっと写真を撮るフリをしているのかもしれない。
写真を撮るフリをして、お客さんからお金を巻き上げる、あくどい商売をしているのかもしれない。
あぁ、僕はなんて罪深き人なんだろう...
と、罪深い人と罪浅い人って何が違うのか?
罪に深いも浅いもあるのだろうか?
僕が巻き上げているお金は少額なので、きっと罪深くはないはず。
だって、一杯お金を巻き上げていたら、今頃豪邸に住めていたはずだから。
罪浅いということでご了承願いたい。
さて、よくお客さんから言われること。
「お写真上手ですね。」
僕の心の呟き。
(ええ、一応、プロですから。
写真が上手でなくて、どうしてお金を巻き上げられようか。
上手でなくてもいいなら、僕の子供に写真を撮らせるよ。
子供いないけれど。)
と、こういうやりとりがたまにある。
もし、こういうやりとりが常々あったら、きっと僕は写真は上手ではないのだろう。
その人たちは、間違いなく、お世辞でそう言っているのだ。
そう言わないと、この人、プロとしてやっていけないだろう、と思って、情けでそう言ってくれているのだと思う。
こういう人達こそ、罪深き人と僕は言いたい。
一緒に仕事している人からは、
「背景をボカして撮って下さい。」
と。
僕の心の呟き。
(背景をボカすだと!お前の顔をボカしてやろうか、ボケェーー!!)
と、こういうやりとりは滅多にない。
ちなみに、風景写真で背景をボカしたら、全てボケてしまう。
また別の人からは、
「ニュージーランドって美しいですよね。」
と。
僕の心の呟き。
(いえ、お嬢さん、あなたの方がよっぽど美しいですよ。)
と、思っていないことは思わないことにしている。
と、こういう感じで、写真を撮影していると、色んなことを言われて、色んなことを心の中で呟くのである。
もし、心の中で呟かなかったらどうなるか?
きっと、今頃僕は病院送りにされていることだろう。
写真は「真実を写す」、と書くけれど、これは本当だろうか?
もし、真実を写しているのであれば、今僕が撮ったあなたはきっと涙を流すことになるだろう。
だって、それが真実だから。
でも、それだとかわいそうなので、頑張って真実とはほど遠い感じで撮影することになる。
しかし、どういう訳か、そういう写真の方が喜ばれるのである。
どうしてなのだろう?といつも不思議に思っているのである。
その人の家には鏡があるのだろうか?
きっと、弥生時代の銅鏡のような、ボヤーと写る鏡しかないのだろう。
こういう経験を一杯積み重ねたことによって得た結論。
結局、写真って、「写嘘」だと思うのである。
(どうやって読むのか僕には分からない。)
今すぐそのように名前を変えてほしいと僕は思う。
そうか、そういう意味で、僕は写真を撮っている、とは言えないんだな、と今思った。
これからは、写真を撮っていないフォトグラファーとして活動していこうと思う。
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とまぁ、なんかくだらない話を書いてみた。
なんでこんなのを書いたのかというと、哲学の元教授でもある土屋賢二という人のエッセイが好きだから。
この間の大掃除の時に、こっちに持ってきていた彼の文庫本を最近再読し始めたから。
今でもそうだと思うけれど、週刊文春にコラムを書いており、ロジックがとても面白いのである。
なんでそんな文章が書けるのだろう?と不思議で仕方がない。
上記のものは、僕が思い付きで書いたものなので、似ても似つかないけれど、彼の書く文章の「雰囲気」だけでも味わってもらえればな、と。(苦笑)
土屋さんの書く文章は、読めばどうってことないような感じだけれど、真似してこういう文章を書こうと思っても本当に書けないのである。
これはこの人独自のロジックだな、とこの人のエッセイを読む度にそう思うのである。
ちなみに、僕が大好きなエッセイは、「われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う(文春文庫)」の中に収められている、「わたしのギョーザをとって食べた人へ」である。
腹を抱えて笑ってしまう。今でも笑える。
あと、「胃カメラからの生還」も面白い。
是非、読んでほしい。
日本にいる人なら是非、この人の文章を一度味わって頂き、そして、上記のものを再読してもらえればなんとなーくわかってもらえると思う。
文章を書くって奥深いな、と思わされるのである。
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